・青空駐車だし親水が本当は良いんだろうけど、水弾きの良さを持ち、コーティングした感覚もほしい。中間の疎水コーティングはどうなんだろうか?
・業者や、知人からスプレー型の疎水コーティングをおすすめされたけど、撥水とどう違うんだろう。何かデメリットあるのかな。
こんなことに興味有る方がこちらの記事をご覧になっているかと思います。
なんとなく、親水の汚れにくさと、撥水の水弾きの良さを両取りしたようなイメージで「疎水コーティング」を考えているのではないでしょうか。
結論から申し上げると、私自身は、水弾きで汚れにくさは決まらない。水弾きは機能を決めるものではなく、好みの問題、というふうに捉えています。
その理由を本記事で解説していきたいと思います。
なお、親水コーティングを詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
疎水と撥水、親水で何が違う?
疎水、撥水、親水で水弾きや機能はどう違うのか、それぞれ説明していきます。
親水 | 撥水 | 疎水 | |
---|---|---|---|
水弾きの角度 | 30〜40度程度 | 90度以上 | 親水と撥水の中間 |
水弾きによる感性の刺激 | 低い | 高い | 中 |
汚れにくさ | シミは付く。泥砂汚れが大きな輪っか状のシミとして残り、車の色によっては目立つ。 | シミは付く。撥水が弱いと、点ジミが残る。特に花粉の季節。強撥水(110〜120度)を維持できると、シミはつきにくい傾向。 | シミは付く。 |
メンテナンスのしやすさ | しにくい。コーティングが効いているのか効いてないのか判断しにくい。 | しやすい。撥水基の摩耗が目でみてわかるので、メンテのタイミングがわかる。 | しやすい。撥水基の摩耗が目でみてわかるので、メンテのタイミングがわかる。 |
洗車時の拭き上げのしやすさ | |||
製品数 | 少ない | 多い | 中 |
ケミカル耐性 | 液剤次第 | 液剤次第 | 液剤次第 |
結論から申し上げてしまうと、疎水、撥水、親水で何が違うかと言えば、「水の弾き方」と、「メンテナンスのしやすさ」、そして「洗車時の拭き上げのしやすさ」この3点だけが異なります。特に汚れにくさ、シミの出来やすさは変わりないと思います。
詳しくみていきましょう。
水弾き、メンテナンス性、洗車時の拭き上げの違い
水の弾き方はご存知の方も多いかと思います。撥水は、接触角が90度以上、親水は、30〜40度程度、疎水は撥水と親水の中間といったかたちです。
メンテナンスのしやすさについては、撥水は撥水基が取れてきたタイミングが一つの目安になるため、誰の目にも視覚的にメンテナンスタイミングがわかるのですが、親水は、シャワーをかけると親水状態のためコーティングの効きがわかりにくく、メンテナンスタイミングが判断しにくいというデメリットがあります。疎水に関しては撥水と同様で判別がしやすいと思います。
最後に、洗車時に拭き上げのしやすさでいうと、撥水が抜群に拭き上げがしやすいです。次いで疎水、一番しにくいのが親水になります。シャワーの水が表面上に残り、親水がなんとなく拭き上げにくいイメージは、経験の無い方でもご想像いただけるかと思います。
汚れにくさは同じなの?
では、汚れにくさは本当に水弾きでかわらないのでしょうか?
シャワーで大量の水をボンネットにかけると、親水は水が1滴も残らず引いていくように見えます。疎水も同様に水玉というより、水の線のようにきれいにおちていくかと思います。
ただ、実際の自然環境ではどうでしょうか?
雨の水1滴は、シャワーの水の量にくらべると、圧倒的に体積が異なります。そのため、親水も疎水も引いていくというより、弱撥水の形でボディの上に水滴が残ってしまいます。
そのため、ボディの上に空気中の汚れた成分を含む水滴が残留し、乾き、シミやウォータースポットになるリスクは、水弾きでは変わらないと言えると思います。
実際に下記のようなお声も散見されました。
汚れにくさは、接触角ではなく滑落角と静電気に影響される?
そもそも汚れにくい状態を作るには理想としてはどのような状態なのでしょうか?物理的にはありえませんが、塗装表面がそもそも汚れていないこと、そして空気中のホコリや油分などを含む汚い酸性雨が振っても塗装表面に残留しないこと。と言えると思います。
その2つの要因について詳しくみていきます。
1.塗装表面に花粉や汚れが滞留しにくい状態を作ること
雨水がどれだけ汚れているかは、地域や雨の振り方で異なりますが、塗装表面が汚れていると雨水と合わさりシミになったり、弾きを阻害し、汚れた水が塗装表面に残留してシミになることが考えられます。
花粉や汚れ、ホコリを塗装表面に残すことに影響している要因の一つは静電気であると考えられています。もう何十年以上にわたり、静電気を除去し、汚れにくくするためのトップコートが研究・開発されていますが、まだ道半ばといったところでしょうか。今後の動向が気になるところです。
2.水滴がボディ表面に残りにくい状態を作ること
2つ目は、水滴をボディに残さない状態を作ることですが、イメージ的に、接触角が高ければ、ボディに残る水滴を減らせるのでは?というお考えの方が多くいるかと思います。
しかし実は違います。
こちらの試験データでも示されていることですが、ボディ表面に水滴を極力残さないことに影響しているのは、接触角ではなく、実は滑落角と呼ばれるものです。滑落角とは、液滴を水平な状態から徐々に傾斜させるときに、液滴が滑落し始める時の傾斜角のことを言います。撥水角と滑落角は相関していそうですが、そうではないとのことです。
ただ、現実世界において滑落角がメーカーでも試験していないため、こちらは自身で検証しなければわからない指標のため、プロの世界では検証されている方もいると思いますが、一般の方には難しいかと思います。
疎水や親水は、細かい小さな水滴1粒1粒を分離させず体積を上げてまとめることで、滑落角を低くしようと研究をすすめていると思うのですが、そちらよりは、強撥水で小さな雨水1滴でも落ちるように努力されているメーカーの方が、滑落角が低いのでは?と個人的にはこれまでの経験踏まえ考えています。
水弾きのみでコーティングの良し悪しは判断できない
以上みてきたように、水弾きで汚れにくいとかシミになりにくいを判断することはできないかと思います。
汚れやシミの付き方を原理的に考えると、接触角でみる水弾きの仕方より、全くことなる指標である滑落角が重要であるともご理解いただけたかと思います。
現状をふまえると、水の弾き方は好みの問題というだけで、性能を決めるものではありません。コーティングの性能としては、シミや汚れがついてもそれをケミカルでリカバリーすることに耐性のあるコーティング剤が良い、と言えるのではないでしょうか?
つまり、汚れやシミはどの弾き方でも変わらない。それよりは、ついてしまったシミをコーティング皮膜に影響なくケミカルで簡単に除去できる仕組みをもつコーティングこそが、現時点で理想のコーティングかと思います。
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